第8回
多忙な30代40代から
チェックしたい乳がん検診

監修医 落合和彦
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長

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働く女性の妊娠と出産にまつわる
就労環境を知る

“仕事もプライベートも自分らしく充実させたい”そんなあなたのウェルネスライフを叶えるために、各方面の専門医が、働く女性のヘルスチェックのアドバイスをするこのコーナーでは、女性の身近にリスクがあるトピックスをご紹介します。

CASE.08では、女性の30代から罹患率が高くなる傾向にある乳がんについてです。区役所からの区民検診の案内を受け取っている人も多いはずですが、欧米の先進国に比べて日本での乳がん検診の受診率は20%~30%と低水準です。今回は、30歳で1児を設け、その後離婚し、シングルマザーとして仕事と家事子育てを両立する42歳のW子さんのケースから、乳がんについて知っておきたいことから検診の重要性についてご紹介します。

多忙な日々に見逃しがちな乳がん検診

CASE.08 都内テレビ局のディレクターのW子さん

仕事と子育てを両立するシングルマザーです。同年代の友人が乳がんになったことを知って衝撃!

W子です。私は現在、都内テレビ局のディレクターとして働くシングルマザーです。昨年まで2年間の関西支局勤務を経て本社に帰局し、仕事にも熱が入っている今日この頃です。30歳で結婚し1児をもうけましたが、仕事を続ける私と主人のすれ違いが多くなり、3年前に離婚しました。実家の手伝いを受けながらシングルマザーとして仕事と子育てを両立する日々です。そんな時、友人のYが乳がんになったことを知って衝撃を受けました。私は、乳がんは高齢者の病気とばかり思っていたからです。そこで、ちょうど区役所から区民検診の案内が来ていたこともあって、早速自分も乳がん検診を受けることにしました。

ドクターズEYE!乳がんの罹患率と検診の受診率の現状

乳がんの罹患率は、高齢者の罹患率が高い大腸がんや肺がんと異なり、30歳代から増え始め、35歳頃から40歳にかけて一つのピークがあります。現在、日本では住民検診による「乳がん検診」は、40歳以上の女性を対象としてマンモグラフィー(MMG)を2年毎に実施することになっています。しかし、我が国の検診の問題点の一つとして、受診率が低いことと、若年者の乳がんにはMMGでの検出率がやや劣ることであります。欧米の先進国では概ね70~80%の受診率であるのに比べて、日本の受診率は20~30%に過ぎません。

40歳に罹患率のピークがあるというのは驚き!仕事に一番熱が入る時期だからこそ、見逃しやすいことにも注意が必要かも。

会社での職域検診や人間ドッグを受けていれば安心?
人間ドッグを受けていれば安心?

たしかに住民検診の案内は毎年届いてはいるものの、会社での職域検診があるために区民検診はほとんど無視していました。私の会社では、自分で受けた人間ドックなどの検診費用の一部を補助するシステムになっていますが、毎年私が受けている人間ドックでは、オプションで乳がん検診(MMG、エコー)となっていて、全額補助がなされないためにためらっていたことも事実です。

ドクターズEYE!
若年者ではMMGによる発見率が低いリスク

欧米の乳がんの好発年齢は閉経後に発生するものが多いのに対し、30~40歳代での発生が多い日本ではMMGだけの検診では発見率が劣ることが指摘されています。これは、乳腺濃度が低下している高齢者では、MMGで病変の濃淡が明らかになり、より検出率が高まるのに対し、乳腺濃度が高い若年者ではMMGによる病変の検出感度が低下するためです。これを補完するために、超音波検査を併用することでがんの発見率が約1.5倍に上昇することが明らかになってきました。このため、乳がん検診としてMMGと超音波検査(エコー)を併用する人間ドックが増えてきました。近い将来住民検診でも、これらを併用することが標準的になる可能性があります。

より正確な結果を得るためにも、MMGと超音波検査(エコー)をした方がより安心ね!

乳がん検診結果の「カテゴリー」には
どんな意味がある?

友人のYは、毎年の乳がん検診で「正常」ではあっても、毎回「カテゴリー2」との記載されていることが不安だったそう。そして今回「カテゴリー3」で要精査とされ、乳がんが見つかったと聞きました。この乳がん検診でのカテゴリー分類って、一体どのようなものなのか、詳しく医師に聞いてみることにしました。

ドクターズEYE!
MMGの結果はカテゴリー分類で評価されている

MMGの結果はカテゴリー分類で評価されています。カテゴリー分類では、はじめにマンモグラムの画質、ポジショニングを評価し、読影不能か、読影可能かの判定を行います。読影可能な場合には、悪性の可能性を考慮して5段階のカテゴリーに分類します。正常の乳房によくある所見で、誰が見てもがんと迷わないものはカテゴリー1、良性所見と判断できるが、後の比較読影の際にも参考になるので記載しておきたいものはカテゴリー2と捉えておけばよいと思います。検診で大切なのは、カテゴリー2以下は精査不要、カテゴリー3以上は要精査と考えて差し支えありません。カテゴリー毎のがん症例の割合は、カテゴリー1、2はそれぞれ0.05%、0.1%です。カテゴリー3は8%、カテゴリー4は41%、カテゴリー5は100%ががん症例でした。

「カテゴリー3」以上は要精査になるのね!ということはたとえ「カテゴリー2」でも心構えは必要になりそうね。

住民検診での
がん発見率はどのくらい?

乳がん検診での結果についての「カテゴリー分類」については理解できましたが、一般的な住民検診ではどのくらいの割合で異常が見つかるのかについても尋ねてみました。

ドクターズEYE!
「要精密検査」のうち約5%でがんが発見される

現在、日本における対策型検診(住民検診)での要精検者数は約7%であります。つまり、乳がん検診の「要精密検査」という結果は、必ずしも乳がんであるということではありません。要精検者の中でがんが発見されるのは、約5%となりますので、全体としては、検診者1000人のうち3人か4人にがんが見つかることになります。要精検の場合には必ず専門外来を受診してください。専門外来ではエコーやMRIの画像診断に加え、腫瘤から直接組織や細胞を採取する針生検、細胞診が行われます。

「要精密検査」であっても、必ずそれが乳がんであるとは限らないけれど、「要精密検査」のうち約5%でがんが発見されることも事実ね。

日頃から注意を払える
乳がんのセルフチェック

日常生活の中で、乳がんに対してはどのように注意をしていけばよいのだろうと思い、食事の注意やがんになり易い体質などがあるのかを、続けて医師に尋ねてみました。

ドクターズEYE!
月1回程度のセルフチェック「ブレスト・アウェアネス」を

自覚症状として一番多いのは,乳房のしこり,乳頭からの分泌液,乳房の痛み,などです。
残念ながら、がんになり易い体質はありませんが、家系的に乳がんや卵巣がんの既往がある場合には、特有の遺伝子に異常がある場合がありますので、専門医でチェックを受けることが必要です。そうでない場合には、まず月1回程度のセルフチェックで乳房の変化を確認するのもよいことです。自分の乳房の状態に日頃から関心をもち,乳房を意識して生活することを「ブレスト・アウェアネス」といい、これは乳がんの早期発見・診断・治療につながる女性にとって非常に重要な生活習慣です。「ブレスト・アウェアネス」を身につけるためには、日頃から自分の乳房の状態を知ることが必要です。そのためには自分の乳房を「鏡で見ること」「全体的に石鹸をつけて指先で触ってみる」(乳房のセルフチェック)ことが重要です。乳房の形状の変化やしこり、血性の分泌などがあった場合にはすぐに医療機関を受診してください。しかし,セルフチェックさえしていれば検診を受けなくてもよいというものではありません。40歳になったら定期的に乳がん検診を受診してください。また食事においても高脂肪食は控え、バランスの良い食生活が重要です。乳がんであることが確定した場合は,治療方法を決めるために,広がり診断,予後因子・予測因子の診断などを行います。治療は手術、抗がん剤、ホルモン剤、放射線などを組み合わせて行うことになります。

まずはセルフチェックからなのですね。私も「ブレスト・アウェアネス」を習慣にしようと思います!

W子さんの感想

乳房に発生する腫瘤(しこり)は、乳がん以外にも様々なものがあるけれども、まずは、「ブレスト・アウェアネス」で異常がないかのセルフチェックが大事ということが分かりました。もちろん異常を感じたなら、すぐに専門医を受診するよう心構えをしています。もちろん、今年は人間ドックで乳がん検診を受けることにしました。MMGに加えて超音波検査(エコー)も申し込んだことは言うまでもありません!

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監修医プロフィール

落合 和彦

生年月日 昭和26年10月10日
現職 東京慈恵会医科大学客員教授
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長
公益社団法人 東京都医師会理事

学歴および職歴
昭和52年東京慈恵会医科大学卒業後、米国UCLA留学を経て東京慈恵会医科大学付属青戸病院院長、産婦人科教授を歴任
平成29年同大学を定年退任 同大学客員教授となる。
公益社団法人・東京都医師会理事、一般社団法人・東京産婦人科医会名誉会長を兼務

所属学会
日本産科婦人科学会(功労会員)、日本産婦人科医会(理事)、日本婦人科腫瘍学会(功労会員)、日本臨床細胞学会(功労会員)、日本産婦人科手術学会(功労会員)日本サイトメトリー学会(名誉会員)など

2019年11月現在

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