第3回
見逃さないで!
その痛み。子宮内膜症。

監修医 落合和彦
一般社団法人 東京産婦人科医会・会長

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痛みに耐えられるかどうかより、
早めの受診を!子宮内膜症

“仕事もプライベートも自分らしく充実させたい”そんなあなたのウェルネスライフを叶えるために、各方面の専門医が、働く女性のヘルスチェックのアドバイスをするこのコーナーでは、女性の身近にリスクがあるトピックスをご紹介します。

CASE.03は、月経痛のある女性の2人に1人に発症と言われるほど多い子宮内膜症についてです。あなたの職場にもこの病気に苦しんでいる女性が周囲にいるかもしれません。毎月おとずれる生理痛を我慢しながら働く女性は多いですが、この病気で女性が最も気になるのが不妊との関連です。今回は、産婦人科の専門医が子宮内膜症についてアドバイス! 結婚をし、そろそろ妊娠・出産を考え始めたC子さんが「子宮内膜症」と診断されてから、無事に出産するまでの事例です。

見逃さないで!
その痛み。子宮内膜症。

CASE03 一般企業に勤めるC子さん36歳の話

いつもの生理痛が、まさかの子宮内膜症?

毎月の月経痛、耐えられるかどうかより早めの受診を!
子宮内膜症

C子です。私は以前から「生理痛」がひどい方でずっと悩んでいました。いろいろな鎮痛剤で、なんとかやり過ごしていましたが、最近仕事も手につかなくなるほど痛みが強くなってきて、会社を休むことも増えてきました。そこで産婦人科を受診した結果「子宮内膜症」と診断されました。

ドクターズEYE!子宮内膜症とは?

子宮内膜症は、もともとは子宮の内側だけにあるはずの子宮内膜が、子宮の内側以外の場所にできてしまう病気です。子宮の内側以外の場所にできてしまった内膜も、本来の子宮内膜と同じように、生理と同じサイクルで女性ホルモンの影響をうけ、増殖や出血を繰り返してしまいます。子宮以外では増殖した内膜や血液は体外に排出することができないため、毎月生理のたびに炎症を起こし、放置した場合には、閉経するまで少しずつ進行していきます。現代の女性は、晩婚化が進んでいるため、妊娠、出産の機会が少なくなっています。それに加え、初経の時期も早まる傾向にあるため、生涯に経験する月経の回数が以前に比べ非常に多くなっているのです。このような傾向も子宮内膜症が増加してきた背景にあるといわれています。また、そのため、患者さんも低年齢化しています。

子宮内膜症という言葉は知っていたけれど、子宮の中ではそんなことが起こっていたのね…

生理痛と一言でいっても、
症状の様子を確認することが大切!

私の「生理痛」は、下腹部の痛みだけでなく月経時に下痢気味になったり、排便痛の症状があったため、自分でもずっと気になっていました。食事の内容を調整し、整腸剤も飲んでみましたがあまり効果は感じられませんでした。そこで思い切って医師に相談しました。

ドクターズEYE!
発症する場所により痛みや症状もさまざま

子宮内膜症がもっとも多く起こるのは卵巣ですが腹膜、ダグラス窩(か)(子宮と直腸の間のくぼみ)、仙骨子宮靭帯(子宮を支える靭帯)、膀胱子宮窩(か)(膀胱と子宮の間のくぼみ)にもよくみられます。発生する部位により、臨床症状は異なり、ダグラス窩に発生する場合には月経時の疼痛に加え、月経時の腸管蠕動が亢進することによって下痢気味になることもあります。また、性交時の疼痛が強くなることを訴える場合も少なくありません。

やはり違和感を覚えていた月経時の下痢気味になる症状や排便痛は病気のサインだったのね。

子宮内膜症と不妊の関連性は?

私の周りにも「子宮内膜症」と診断された同僚は決して少なくないことに気がつきました。調べてみると子宮内膜症の発生原因には女性の置かれた社会環境が関係していることがわかりました。統計によると、子宮内膜症の発生率は1970年代には月経痛のある女性の10人に1人とされていましたが、近年では2人に1人の割合になっているとの報告もあるそう。また、食生活との因果関係を指摘する声もあり、ファーストフードや冷凍食品、インスタント食品など便利で手軽に食べられるものが増えたことで、こうした食品に多量に含まれる動物性の脂肪分の長期的な暴露が子宮内膜症の発生と関係しているとも言われているのだそうです。

結婚してから5年が経ち、35歳という年齢を考えた時、そろそろ妊娠を希望していましたが、なかなか妊娠しませんでした。いつか妊娠するだろうと気楽に考えていましたが、今回診断された子宮内膜症と不妊の関係があるのか不安になってきました。

ドクターズEYE!
子宮内膜症と不妊の原因の関連性

子宮内膜症は不妊の原因のひとつにもなります。子宮内膜症患者さんの約20~30%が不妊を訴え、逆に不妊患者さんの40~50%に子宮内膜症が認められます。両者の関わりは深く、因果関係などはっきりとはまだ解明されていませんが、子宮内膜症の病巣波及による骨盤腹膜の癒着や、炎症性変化によるものが想定されています。卵巣に病巣をつくる子宮内膜症の一種である「チョコレート嚢胞」がある場合や、骨盤内の広範な癒着病巣がある場合には、積極的な手術治療により妊娠しやすくなるとされています。

やはり、不妊との関連も考えられるということなのね…

具体的な治療法や症状の経過は?

不妊についても関連性が指摘されていると知り、ますます一刻も早くこの病気を治したいと気持ちがはやりました。そこで治療法についてより詳しい医師に「子宮内膜症の治療としては、手術的に病巣を切除する方法以外にはどのような治療があるのでしょうか?」とたずねました。

ドクターズEYE!
子宮内膜症の具体的な治療法

ごく症状が軽い場合には、鎮痛薬を症状に合わせて服用するように指導しますが、これは根治的な治療にはなりません。治療の柱になるのは「ホルモン療法」です。それだけに、年齢的な問題を考慮して、すぐに妊娠を希望する場合には適応とならないこともあります。治療を優先するのか、体外受精などの不妊治療を優先するのか、十分に医師と相談しておく必要があります。代表的な治療としては以下の3種類があります。

黄体ホルモン療法
卵巣からの女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を抑制し、子宮内膜の周期的な増殖を抑えることで月経を止め、月経痛などの症状を改善します。また、病巣を小さくする作用もあり、下腹部痛や腰痛、性交痛、排便などの月経時以外の痛みの症状を抑えます。副作用としては、子宮内膜が薄くはがれやすい状態になるため不正出血がみられます。

低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(低用量ピル療法)
ピルを使って妊娠と同じ体内環境にし、排卵を抑えることで子宮内膜の増殖を抑えます。最近では、長期間継続することで定期的な月経を抑制するような新たな投与法も開発されています。

GnRHアゴニスト療法
女性ホルモンの分泌を抑えて一時的に閉経と同じ状態にすることで、病巣を小さくします。注射剤と、点鼻薬(鼻の粘膜にスプレーする)があります。副作用として、うつ状態、ほてり・のぼせなどの更年期症状があります。

私のように妊娠を希望しているケースとそうでないケースでは治療法も変わってくるのは当然ね。

まずはこの辛い症状を改善したい…

私は、当面の症状を緩和する目的で二つ目の治療法である低用量ピルの使用を開始しました。ピルを始めて数か月で、月経量が減少してきたことに加えて、生理痛が劇的に改善してきてホッとしました。鎮痛剤を飲むことは少なくなり、何より嬉しかったのはお腹が「ゆるくなる」ことがなくなったことでした。症状が改善してきたタイミングで、もともと妊娠も希望していたので、ピルの服用は1年で止めたいと医師に申し出ました。

ドクターズEYE!根治治療と不妊治療の問題

一時的に生理を止めるような治療(偽閉経療法)やピルを使用する治療(偽妊娠療法)を実施したとしても、治療を終了してホルモンの分泌状態が元のように回復すると、残存した子宮内膜症病変が増殖して再び悪化することがあります。ですから、妊娠を希望して治療を中止する場合には、期間を限定し、あらかじめ不妊治療のプログラムを策定しておくなど、慎重に対応することが必要なのですよ。

なるほど、薬を飲まないとまた元のように痛みが出てしまうとは。治療には時間が必要なのね。 なるほど、薬を飲まないとまた元のように痛みが出てしまうとは。治療には時間が必要なのね。

痛みの症状だけでなく、
将来的な癌のリスクについても知っておきたい

そして、私が一番心配していたことを医師に打ち明けました。「卵巣にできた子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)を、長期間放置しておくと、卵巣癌になると言われていますが本当ですか?」

ドクターズEYE!チョコレート嚢胞と卵巣癌

おっしゃる通り、チョコレート嚢胞からも、約0.5%~1%の頻度で悪性(卵巣癌)が見つかっています。これは年齢や大きさと関係があります。40歳頃から卵巣癌の発見率が増えてきているため、40歳未満では10㎝以上は卵巣嚢腫摘出(腫れているところだけ取り卵巣は残す)、40歳以上では10㎝以上や急に大きくなる場合は卵巣摘出を勧めています。
またチョコレート嚢胞を持っている人の中には最初は良性であったものでも癌化する場合もあります。頻度としては多くはありませんが、長い時間がたって癌になる方がいますので、子宮内膜症、特に内膜症による卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞)と診断された方は、症状がなくても定期検診を続けることをお勧めしますよ。

治療を受けたC子さんの感想

私は自分の年齢や状況を踏まえて、医師と相談しながら1年後に治療を一旦中止して、不妊治療に専念をし、無事に体外受精により妊娠することができました!ですが、分娩後には治療を再開し、その後も定期的に産婦人科を受診しています。
子宮内膜症とは長い目で向き合っていかなければなりませんが、妊娠・出産という年齢と関連する問題がある場合は、治療の時期ややり方を医師と相談しながら進めていかなければならないことがよく分かり、もし私と同じように「生理痛」で悩んでいる女性がいたら、早めに医師に相談するのがよいと思います。

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監修医プロフィール

落合 和彦

生年月日 昭和26年10月10日
現職 東京慈恵会医科大学客員教授
一般社団法人 東京産婦人科医会・会長
公益社団法人 東京都医師会理事

学歴および職歴
昭和52年東京慈恵会医科大学卒業後、米国UCLA留学を経て東京慈恵会医科大学付属青戸病院院長、産婦人科教授を歴任
平成29年同大学を定年退任 同大学客員教授となる。
公益社団法人・東京都医師会理事、一般社団法人・東京産婦人科医会会長を兼務

所属学会
日本産科婦人科学会(功労会員)、日本産婦人科医会(理事)、日本婦人科腫瘍学会(功労会員)、日本臨床細胞学会(功労会員)、日本産婦人科手術学会(功労会員)日本サイトメトリー学会(名誉会員)など

2019年1月現在

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