第22回
「我慢するのが当たり前」になっていませんか? 働く女性と健康のこれから

監修医 落合和彦
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長

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「我慢するのが当たり前」になっていませんか? 働く女性と健康のこれから

“仕事もプライベートも自分らしく充実させたい”そんなあなたのウェルネスライフを叶えるために、各方面の専門医が、働く女性のヘルスチェックのアドバイスをするこのコーナーでは、女性の身近にある健康課題をご紹介します。

CASE.22では、「働く女性と健康」がテーマです。働く女性が増え、仕事を続けながら結婚、妊娠・出産、育児、そして更年期を迎えることも、今ではごく当たり前になりました。

一方で、月経痛やPMS、更年期症状など、女性の身体は年齢やライフステージによってさまざまに変化します。「これくらいなら我慢できる」「仕事を休むほどではない」「周囲に迷惑をかけたくない」そう考え、不調を抱えたまま働いている女性も少なくありません。

今回は、毎月の月経に伴う不調に悩む35歳のI子さんのケースから、働く女性の健康と、これからの職場のあり方について考えてみましょう。

「毎月のことだから」と我慢してきたI子、35歳

CASE22:働く女性と健康について

私はI子、35歳。
短大を卒業してから今の会社に入り、気がつけば勤続15年になりました。

仕事にも慣れ、責任のある仕事を任されることも増えました。体力には自信があるほうで、これまで大きな病気をしたこともありません。

ところが最近、毎月の月経が少し憂うつです。
以前から月経痛はありましたが、ここ数年は月経前になるとイライラしたり、気分が落ち込んだり、頭痛やだるさを感じたりすることが増えてきました。
特につらい日は仕事に集中できず、生理休暇を取ることもあります。

「毎月のことだし、仕方がない」

そう思っていたのですが、ある日、人事担当者から「毎月休むようであれば、一度きちんと医療機関で診てもらっては」と声をかけられました。

確かに、これからも仕事を続けていくなら、このまま我慢しているだけでいいのかな……。

そんな疑問を持つようになりました。

女性の身体は、年齢によってどう変わっていくの?

私がまず知りたかったのは、そもそも女性の身体とホルモンには、どんな関係があるのかということでした。

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女性の身体は、女性ホルモンの変化とともに歩んでいます

女性ホルモンは、思春期から更年期まで卵巣から分泌されるホルモンですが、男性のように一定に分泌されるのではなく、月経~排卵~月経という、およそ1か月単位でくり返される大きな変動があります。
女性ホルモンの変化に加えて、結婚や育児などのライフイベントによっても男性とは異なった心身の変化をしています。

昔、出産回数が多かった時代には、女性の生涯月経はおよそ50回ぐらいだったと考えられています。
それは、妊娠と授乳を繰り返していたため、無月経期間が長かったからです。
それに比べて現代では、その約10倍もの(約450~500回)月経を経験すると言われており、毎月の排卵・月経を中心に、女性の心身は性ホルモンの動きによって大きく、かつ頻回に変化するようになっています。
特別な婦人科的な疾患がなくとも、ホルモンの変化、排卵や月経の状況によって様々な症状が出現することがわかってきました。

毎月の身体の中で、こんなに大きな変化が起きているんですね。

月経痛やPMSも「我慢するしかない」もの?

そう考えると、私は20年以上も毎月のように月経を経験してきたことになります。

「毎月あるものだから普通」と思っていましたが、毎月身体の中では大きな変化が起きているんですね。

では、最近私が感じている月経痛や月経前の不調も、こうした変化と関係しているのでしょうか。

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月経回数の増加が引き起こす、女性の「隠れた健康リスク」とは?

月経の回数が増えることによって、子宮内膜は月経血に暴露され、一部は腹腔内にも流出します。
これらの血液は局所の炎症を引きおこし、月経痛、月経前症候群(PMS)や、子宮内膜症など女性ホルモンの動きによって誘発されやすい疾患や症状が増えると考えられます。
これも少子化社会における女性の新たな健康問題とも考えられているのです。

自分の痛みにきちんとした理由があると知れて、すっきりしました。

女性の健康は「個人の問題」だけではありません

私にとって意外だったのは、「月経だから仕方がない」で終わらせなくてもいいということでした。

でも、もうひとつ気になったことがあります。
体調が悪くて仕事を休むと、どうしても「周囲に迷惑をかけているのでは」と考えてしまいます。

女性の健康問題は、本人だけが何とかするものなのでしょうか。

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健康課題は、仕事のパフォーマンスやキャリアにも影響します

女性の健康課題は生産性や離職率に影響を与える場合があります。
PMSや生理痛といった生理周期に関連する健康問題は、アブセンティーズム(欠勤や早退などで就労できない状態)やプレゼンティーズム(就労しているがパフォーマンスが落ちている状態)につながるとされています。
加えて、出産や育児といった女性のライフステージに応じたサポートが不足していると、離職や女性のキャリアの断絶につながるリスクが高くなります。
女性の健康課題は、組織全体で対策の検討が必要だと言えるでしょう。
就労者にとって望まれない職場となることは可能な限り避けなければなりません。女性の健康を支える体制作りが企業にとって、働く女性の活躍を後押しする重要な要素となっているのです。

体調管理は自分だけの問題ではないと、初めて知りました。

「相談できる職場」をつくることも大切

「体調管理は自己責任」
どこかでそんなふうに思っていました。
もちろん自分の身体を知り、必要なら受診することは大切です。
でも、それだけでは解決できないこともありそうです。
では、会社には具体的にどんなことができるのでしょうか。

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制度だけでなく「相談しても大丈夫」と思える環境を

女性の健康課題においては、個人だけでなく、周囲の理解とサポートが非常に重要です。
しかしながら、女性特有の健康課題への認識は、まだ十分であると言えません。
正しい知識が共有されていないため、職場での適切な対応が取られず、トラブルにつながるケースも存在します。
組織として女性の健康課題への理解を深め、サポート体制を向上させることが求められています。
つまり、女性の健康課題に対するリテラシーを高める取り組みが必要なのです。
女性が直面する健康課題は、生理周期やそれに伴う不調、妊娠・出産、更年期障害など様々です。
ですから従業員や管理職に対する教育を通じて、女性の体の変化についての理解を深めていくと同時に、女性自身も自己管理能力を強化していく必要があります。
テレワークの導入や、臨時の休暇制度の提供など、必要に応じて柔軟な勤務体系を選択できるような、企業のサポートも求められていきます。

生理周期とくに月経前には月経前症候群PMSに起因する体調やメンタルの不調は、女性のパフォーマンスに影響を与えかねません。
またその程度は人によって様々です。職場内の総務、人事などに相談できる窓口を設置し、産業医の面談や場合によっては産婦人科医師や心療内科、カウンセラーの紹介など、直接的な支援の検討が必要だと言えるでしょう。
産婦人科では低用量ピルや漢方薬などを処方したり、心療内科ではカウンセリングや抗うつ薬、睡眠導入剤などの処方が必要になることもあります。
仕事と育児・介護の両立問題や夫の転勤、睡眠時間の短さなど、女性特有の社会的ストレスや根強く残る性別役割分業も女性の心理状態に影響していると考えられます。
前述したとおり、女性が相談しやすい相談窓口の設置や、男性管理職の女性部下に対するマネジメント研修など、職場の受け入れ態勢を整えることが肝要です。

相談できる雰囲気づくりが、こんなに大切なんだと分かりました。

40代、50代になっても働き続けるために

私自身も、生理休暇を取るたびに、周囲からどう思われているのか気になっていました。
もし「困ったら相談していい」という雰囲気がもっとあれば、少し違っていたのかもしれません。

そしてもうひとつ気になったのが、これから先のこと。
35歳の私にも、いずれ「更年期」がやってきます。
今後も仕事を続けるとしたら、更年期についても今から知っておいたほうがよさそうです。

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更年期の症状も一人ひとり違います

閉経前後の5年間を更年期と呼び、この時期に発症する様々な身体的、精神的な不調を総称して更年期障害と呼んでいます。
更年期は、ホルモンの分泌が減少することで様々な症状が発生するとされています。
特にホットフラッシュと呼ばれる血管運動系の不調は仕事にも支障があります。周りの人に比べ、顔や手に汗をかきやすく「持った書類がびしょびしょになった」と訴える女性もみられます。
加えてイライラ、不眠などの精神症状がひどくなる場合もあり、症状は一律ではありません。治療も個別に対応する必要があるため、早期に産婦人科や心療内科などに受診することが必要です。
また、男性にも更年期が存在すると言われており、更年期は女性だけの問題ではないと言えます。
こうした変化に対し、企業としては、周囲の理解を進めることや健康診断、医療機関の紹介など、対策が求められてきます。

更年期も人それぞれ。今から知って備えておきたいと思いました。

I子の感想

これまで私は、月経痛や月経前の不調は「女性なら仕方がないもの」だと思っていました。

仕事を休むことにもどこか後ろめたさがあり、多少つらくても我慢して出勤することが当たり前になっていたように思います。

でも今回、女性の身体は月経、妊娠・出産、更年期など、年齢とともにさまざまな変化を経験すること、そして不調の中には治療や相談によって改善できるものがあることを知りました。

まずは、自分の身体の状態をきちんと知ること。

そして必要なときには医療機関で相談すること。それが、これからも自分らしく働き続けるための第一歩なのだと感じています。

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監修医プロフィール

落合 和彦

生年月日 昭和26年10月10日
現職 東京慈恵会医科大学客員教授
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長
公益社団法人 東京都医師会理事

学歴および職歴
昭和52年東京慈恵会医科大学卒業後、米国UCLA留学を経て東京慈恵会医科大学付属青戸病院院長、産婦人科教授を歴任
平成29年同大学を定年退任 同大学客員教授となる。
公益社団法人・東京都医師会理事、一般社団法人・東京産婦人科医会名誉会長を兼務

所属学会
日本産科婦人科学会(功労会員)、日本産婦人科医会(理事)、日本婦人科腫瘍学会(功労会員)、日本臨床細胞学会(功労会員)、日本産婦人科手術学会(功労会員)日本サイトメトリー学会(名誉会員)など

2026年2月現在

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