第17回
女性の腰痛 -婦人科との関係は?-

監修医 落合和彦
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長

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女性の腰痛 -婦人科との関係は?-

仕事もプライベートも自分らしく充実させたい”そんなあなたのウェルネスライフを叶えるために、各方面の専門医が、働く女性のヘルスチェックのアドバイスをするこのコーナーでは、女性の身近にリスクがあるトピックスをご紹介します。

CASE.17では、特に女性に多く、年とともに悪くなっていく「腰痛・背部痛」についてです。経理課のY美さん(49歳)が腰痛に悩まされ、かかりつけの婦人科医や整形外科医の診断を受ける中で明らかになった女性ならではの腰痛事情についてご紹介します。

年々悪化していく腰痛に悩むY美、49歳の相談。

CASE 17:女性の腰痛

Y美です。私は以前から更年期障害で悩んでいて、かかりつけの婦人科医に通いつつ漢方治療を受けています。ホットフラッシュやイライラ感などはだいぶ改善されたのですが、もう一つ気になる症状がありました。椅子から立ち上がる時の腰痛が年々ひどくなっているように感じられたのです。最初は婦人科の問題ではないと思っていましたが、思い切って婦人科受診時に主治医に相談してみることにしました。

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整形外科の病気の可能性がないかを確かめる。

更年期の女性においても、腰痛を訴える方は比較的多いと言えますが、整形外科領域で腰痛の原因として一番多いのは,明らかな骨・筋肉の病気ではなく、腰痛というあくまで症状が主体の「腰痛症」という病態と言われています。更年期の女性では、姿勢や足を組む癖など日常的な動作から来る慢性的な疲労や永年に亘る加齢変化などに由来する「腰痛症」が最も多いと推測されています。ただし、日常生活に多大な支障を来すような重い腰痛がある方や足のしびれ歩行障害を認めるような腰痛を認める場合には,まずは整形外科を受診され「椎間板ヘルニア」「腰椎すべり症」などの他の整形外科の病気の可能性がないかどうかを確かめる必要があります。

しっかり整形外科を受診して検査することが大切なのね。

女性の腰痛に関する一般的なアドバイスは?

私は少し安心したが、年を重ねるごとに感じる腰痛が気になり、特に女性によく見られる「腰痛・背部痛」について婦人科の主治医に質問しました。

主治医は整形外科への紹介をしてくれつつ、女性の腰痛に関する一般的なアドバイスもしてくれました。

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女性の体は、腰痛を引き起こしやすい。

女性の体は、男性と比べて筋肉が付きにくくなっています。腰回りの筋力が不足すると腰椎に負担がかかり、腰痛を引き起こしやすくなります。更年期の時期になると、体幹の柔軟性も失われ、腰痛が悪化することがあります。とくにハイヒールを履いて仕事をする職場では、無理な姿勢を強いられることや、椅子からの立ち上がり動作など本人は意識しなくても、無理な姿勢が続く場合も少なくありません。このような腰や背中に不自然な力が加わり、腰椎や周辺の筋肉に負担がかかることがあります。このようにして骨や靱帯には異常はなくとも不愉快な腰痛が持続することになるのです。 腰痛を予防するには、正しい姿勢を保ち、日常的なストレッチ、定期的な運動や筋力トレーニングを行なうよう心がけましょう。

普段の姿勢やストレッチ、運動が大切なんだなって改めて感じたわ。

腰痛と生理痛の関係

私は、腰痛の原因を知るため、紹介された整形外科で「椎間板ヘルニア」や「腰椎すべり症」「脊椎管狭窄症」などの検査を受けることにしました。整形外科では医師による触診やX線検査が行われ、結果の詳細はMRIによる画像検査を待つことになりました。結果説明では特に異常は見られなかったものの、医師から「生理痛」との関連性を指摘されました。若いころからの強い生理痛に悩んでいた私は、後日、そのことをかかりつけの婦人科医に相談してみました。主治医は、「異常がなくて良かった」と安心してくれつつ、生理痛と腰痛の関係について親身に解説してくれました。

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ホルモンバランスの変化と腰痛の関連性。

女性の場合は、 生理前後にはホルモンバランスが大きく変化するため、体の不調を感じる人も多いでしょう。特に強い生理痛を起こす方には子宮の収縮を促すプロスタグランジンというホルモンの分泌量が多い人がおります。そのような方では、月経時だけでなく強い腰痛が起きることもあります。整形外科の先生はそのために「生理痛」について質問されたものと思われます。

月経時だけでなく強い腰痛が起きることもあるのね。

腰痛と子宮内膜症

私は若い頃から「子宮内膜症」と診断され、そのためにホルモン療法を受けたことがあります。当時、月経時の腰痛が非常に辛く、「腰が割れる」ような感覚を覚えていました。しかし、ホルモン療法のおかげで、月経時の腰痛は遠い過去の話になりました。

また、今では月経が不順になっていることから、主治医からは「気にしなくて大丈夫」と言われて安心しました。それでは、私自身が今後デスクワークをする中での腰痛対策はどうすれば良いのか、気になります。

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デスクワーク中の快適な腰痛対策。

長時間のデスクワークでは、座り姿勢が長く続くことで筋肉が凝り固まり、疲労物質がたまりやすくなっています。 特に、デスクや椅子の高さや位置が合っていない、キーボードやマウスの位置が適切でないなどの理由で悪い姿勢が長く続くと、腰に大きな負担がかかります。 デスクワーク環境を適切に調整したうえで、長時間同じ姿勢で座り続けない、30分ごとに休憩をとるなどを意識して、定期的に姿勢をリセットするよう心がけましょう。腰痛対策には、「ストレッチ」が効果的です。とくに脊柱起立筋のストレッチは椅子に座った状態で行なえるため、デスクワーク中にも取り入れてみましょう。両手を「バンザイ」しながら、背もたれに沿って腰を反らせたまま左右90度体を捻る動作を30秒位維持するものです。ストレッチをする際には、体に負担をかけない適度な強さで行なうこと、定期的に続けることを心がけてください。

忙しい仕事の合間にできるストレッチや心地よい座り方を実践することで、気分もリフレッシュ。自分の健康を大切にする工夫が必要ね。

腰痛と子宮がん

そういえば、もうすぐ子宮がん検診の時期になっていることを思い出した。「腰痛とがんって関係あるのかな?」心配になってきた。

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定期的な検診の重要性

腰痛の原因には、筋肉や関節などの原因だけでなく、神経の問題や脊椎疾患、内臓疾患などの可能性も考えられます。もちろん子宮がんや乳がんなどが周囲に浸潤したり、骨に転移をしたりすると強い腰痛がおきる場合があります。そのためにも定期的ながん検診は必須です。

腰痛って色んな原因があるんだね。がんの可能性もあるから、定期的な検診は欠かせないね。

Y美の感想

私は、早速子宮がん検診や乳がん検診を予約しました。ちょっと緊張したけど、専門家のアドバイスを聞いて安心できました。腰痛の原因は85%が特定できないのだそうだけど、自分の健康を守るためには、ちゃんと定期的な検査や腰痛対策を考えていくことが大切だとわかりました。

それに運動不足は良くないって言われたから、これからは運動も頑張ろうと思う。日常の生活も見直して、通勤にはスニーカーを履くようにし健康に気をつけていくつもりです。

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監修医プロフィール

落合 和彦

生年月日 昭和26年10月10日
現職 東京慈恵会医科大学客員教授
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長
公益社団法人 東京都医師会理事

学歴および職歴
昭和52年東京慈恵会医科大学卒業後、米国UCLA留学を経て東京慈恵会医科大学付属青戸病院院長、産婦人科教授を歴任
平成29年同大学を定年退任 同大学客員教授となる。
公益社団法人・東京都医師会理事、一般社団法人・東京産婦人科医会名誉会長を兼務

所属学会
日本産科婦人科学会(功労会員)、日本産婦人科医会(理事)、日本婦人科腫瘍学会(功労会員)、日本臨床細胞学会(功労会員)、日本産婦人科手術学会(功労会員)日本サイトメトリー学会(名誉会員)など

2019年11月現在

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