第15回
低用量ピル 働く女性にありがたいその副効用

監修医 落合和彦
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長

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低用量ピル 働く女性にありがたいその副効用

“仕事もプライベートも自分らしく充実させたい”そんなあなたのウェルネスライフを叶えるために、各方面の専門医が、働く女性のヘルスチェックのアドバイスをするこのコーナーでは、女性の身近にリスクがあるトピックスをご紹介します。

CASE.15では、避妊効果だけでなく副効用として月経量の減少、月経痛の軽減、月経前の不快な症状など女性特有の症状を軽減し、働く女性にとってありがたい効果をもたらす低用量ピルについてです。ホルモン剤ということから低用量ピルに対して抵抗があった経理課のY(35歳)が、実際に低用量ピルの服用を開始して身体の変化を体感したケースをご紹介します。

避妊、月経に伴う不快な症状に悩む経理課のY、35歳。

CASE.15 低用量ピル 働く女性にありがたいその副効用

経理課のY、35歳です。外資系の商社に勤める40歳の彼氏と同棲しています。妊娠を希望した頃もありましたが、任される仕事も多くなり、彼の出張も多く、さらに子供を含めた住環境を確保するには2人の収入では難しい。事情を知る同僚のSに相談ところ専門医を紹介してもらいました。医師は話を聞いた上で低用量ピルを勧めてくれましたが、何となく「低用量ピルはホルモン剤」ということに抵抗があったのも事実です。

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女性ホルモンエストロゲンの配合量が少ない「低用量ピル」

経口避妊薬(OC)としてのピルは、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の合剤ですが日本国内で使われるOCは、エストロゲン成分含有量が少ない低用量タイプが一般的です。排卵を抑制する効果精子の進入を防止するなど高い避妊効果があります。また服用を止めれば3か月以内に通常の妊娠ができる環境に戻ります。その中でエストロゲンの配合量が特に少ないものを低用量ピルとして長期の処方には適しています。

ホルモン剤の服用に抵抗があったけれど、私の悩みを解決してくれる効用もあることをしって、少し安心したかも。

健康診断で異常がなくても
早めの受診を

ドクターの話を聞き、少し安心できましたが、元来、月経痛が強く、月経量も多いため鎮痛剤は手放せないでいたため、何回か婦人科に受診したこともありましたが、大きな異常は指摘されたことはありませんでした。「こんな症状がある私でも低用量ピルが使えるのでしょうか?」と医師に尋ねてみました。

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低用量ピルが働く女性にとってありがたい理由

大丈夫です。むしろ、そんな貴女に最も適しているのが低用量ピルなのです。低用量ピルは主作用としての避妊効果だけでなく副効用として月経量の減少、月経痛の軽減、月経前の不快な症状を軽減するなど働く女性にとっては極めてありがたい効果もあるのです。

避妊効果だけでなく月経に伴う不快症状にも効用があるなんて、ありがたいわ。

服用にあたっての
心配や注意点はあるの?

ホルモン剤としての「低用量ピル」を使ってみたいと思った私は、薬の服用にあたって心配なことや使用上の注意などはどうなのか、さらに医師に質問してみました。

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服用にあたっての低用量ピルの副作用を知る

低用量ピルの副作用として多く見られるものとしては吐き気とむくみです。また月経前に乳房の張りを自覚する方も少なくありません。程度に差はありますが、約3割の方が訴える症状です。いずれもホルモン剤に対しての反応で、2~3か月継続しているうちに症状が軽くなる方がほとんどです。我慢できない場合には中止したり、漢方薬と併用することもあります。次に多い症状としては不正出血があります。5人に1人くらいの割合でみられます。普段の月経よりは少ない量ですが、断続的に不正出血が見られるといった症状があります。これも服用を継続いただくことで、3か月程度で自然になくなることがほとんどです。量が増えてきたり、期間が長びくようであれば、医師に相談してください。副作用として頻度は多くありませんが、重篤なものとして血栓症があります。服用を開始してから3か月以内に突然発生する激しい頭痛や、胸の痛み、舌のもつれ、ふくらはぎや太ももの腫れや痛みなどが見られたら、早めに医師に相談してください。特に喫煙者や肥満体型の方は発生頻度が高くなりますので、一日15本以上の喫煙者にはピルは使用できません

低用量ピルに効用があることと同じように、それによる副作用も把握しておきたいわね。

低用量ピルとがんの因果関係は?

会社に戻りSに相談したところ「ホルモン剤は『がん』の原因になるって聞いたことがあるわよ」とのSの言葉。それを確かめるため、翌週、もう一度専門医を訪れました。

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低用量ピルとがんのリスク

我が国でのデータは未だ十分ではありませんが、低用量ピルは乳がんや子宮頸がんの発生リスクを僅かながら高めるとの報告があります。これは、低用量ピルに含まれるエストロゲンによるものとされています。ですから、子宮頸がん検診、乳がん検診は積極的に受診いただく必要があります。一方で、低用量ピルを服用すると子宮体がん、卵巣がん、大腸がんのリスクを減らすという効果も明らかになっています。

がんのリスクについては、データが不完全ということもあるけれど定期健診できちんと把握しておくことが必要ね。

試してみたい低用量ピル
その費用はどのくらい?

単に避妊効果だけでなく、いろいろな効果があることが解り、試してみたいと思ったが、料金はどのくらいなのか、どうやって服用するのか聞いてみることにした。

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低用量ピルの服用にかかる料金

低用量ピルには休薬期間のあるタイプと、休薬期間のないタイプがあります。どちらのタイプでも月経初日から1シート目を開始してください。休薬期間のあるタイプでは1週間の休薬をした後、2シート目を開始します。休薬中に月経が来るのが一般的です。低用量ピルは避妊目的では保険診療にはなりませんので、自費処方になります。
医療機関によって金額は様々ですが、概ね1シートあたり2,500円から4,000円になります。このほか医師の診察・処方が必要な薬なので、ピルの料金に診察代や処方代などがプラスされます。

なるほど、低用量ピルは自費処方になるのね。自分のライフスタイルに合わせて取り入れるのがよさそうね。

避妊用と治療用
同じ低用量ピルでもどう違う?

友人が子宮内膜症でピルを服用していたと聞いたことがありましたが、避妊用ピルとはどう違うのか疑問が湧いてきたので、この機会にそれも聞いてみることにしました。

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ホルモン量が調整された低用量ピルは様々な用途に使用される

ピルが初めて経口避妊薬としてアメリカで認可されたのは1960年代でした。当時のピルはホルモンの配合量が多く避妊効果があるものの、静脈血栓塞栓症をはじめとした重大な副作用を起こす確率が高いことが問題でした。そこで、ホルモン量を減らし、より安全で効果的に服用できるように改良が続けられた結果生まれたのが、現在の低用量ピルです。ピルは配合するホルモンの種類によって避妊以外にも様々な効果が現れることが分かってきたことがLEP(=Low dose Estrogen Progestin;低用量ピル)誕生のきっかけといえるでしょう。現在では避妊用のピルをOC(Oral Contraceptive)、月経困難症や子宮内膜症の治療や症状の緩和に用いられる低用量ピルをLEPと呼びます。医師がこれらの疾患を診断し、適応がある場合にはLEPを保険で処方できることになります。

低用量ピルは、経口避妊薬としてスタートして、現在はより安全で効果的に服用できるようになったのね!

月経困難症の症状は改善したものの
妊娠への影響は?

私が長期間、月経時の痛みがあり、最近は痛みも増強し、月経量も増えてきたことを医師に相談したところ、医師は「月経困難症」として保険で服用できる低用量ピル(LEP)を処方してくれました。
服用を開始してから3か月が経ったころ、身体の変化に気が付きました。あれだけ気になっていた月経時の痛みも嘘のように軽くなったのです。また月経量も減り、月経時の外出も億劫でなくなりました。数年後には妊娠も考えていましたが、薬を止めて以前のような症状が出るのも嫌だったので、長期間の服用で妊娠に影響が出ないかも気になっていました。

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服用を止めれば妊娠にも影響はない

LEP製剤やOC製剤は服用を止めれば、月経が回復します。3か月程度で安定した周期になることが多く、排卵も通常通りとなるために妊娠可能な状態になります。月経困難症も服用中止後6か月程度は軽くなっていますが、残念ながら、その後次第に戻ってしまう場合も少なくありません。ですから、この期間を利用して積極的に妊娠するのが望ましいと考えます。また、妊娠した場合にも服用していた「低用量ピル」の影響は全くありません

服用と中止する期間で、妊娠希望時期の計画も立てやすくなるのね。

Yの感想

服用開始後1年経過しましたが、Yの体調は良好で、定期的に受診している安心感に加え、月経時の不快感もすっかりなくなりました。国も少子化対策として様々な支援が準備されているとの報道もあり、将来の妊活についてもパートナーと相談しています。

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監修医プロフィール

落合 和彦

生年月日 昭和26年10月10日
現職 東京慈恵会医科大学客員教授
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長
公益社団法人 東京都医師会理事

学歴および職歴
昭和52年東京慈恵会医科大学卒業後、米国UCLA留学を経て東京慈恵会医科大学付属青戸病院院長、産婦人科教授を歴任
平成29年同大学を定年退任 同大学客員教授となる。
公益社団法人・東京都医師会理事、一般社団法人・東京産婦人科医会名誉会長を兼務

所属学会
日本産科婦人科学会(功労会員)、日本産婦人科医会(理事)、日本婦人科腫瘍学会(功労会員)、日本臨床細胞学会(功労会員)、日本産婦人科手術学会(功労会員)日本サイトメトリー学会(名誉会員)など

2019年11月現在

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