第14回
女性の脚のむくみ 怖い病気のサインかも?

監修医 落合和彦
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長

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女性の脚のむくみ 怖い病気のサインかも?

“仕事もプライベートも自分らしく充実させたい”そんなあなたのウェルネスライフを叶えるために、各方面の専門医が、働く女性のヘルスチェックのアドバイスをするこのコーナーでは、女性の身近にリスクがあるトピックスをご紹介します。

CASE.14では、身体の中で最もむくみが起こりやすい脚のむくみについてです。脚のむくみは立ち仕事の人に多い症状ですが、デスクワークの人にもよくみられるもので、一時的な症状であればあまり心配はいらないものの、実は心臓や肝臓、腎臓など重大な病気が発見される場合もあるのだといいます。今回は、経理課のY江50歳のケースをご紹介します。

健康診断で異常はないのに、脚のむくみに悩むY江50歳

CASE.14 女性の脚のむくみ 怖い病気のサインかも?

経理課のY江です。今年50歳を迎えましたが、これまで大きな病気をしたことはなく、毎年の健康診断でも大きな異常は指摘されていませんが、実は「脚のむくみ」に悩んでいました。「どうせ齢のせいよね、ちょっとお酒を飲みすぎたのかしら」と、たかをくくっていましたが、最近一晩休んでもむくみが引かない事もあり、ぼこぼこと瘤のようなものも出て心配になり、かかりつけの内科の医師に相談してみました。

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脚のむくみは重大な病気のサインのケースも

身体の中で、最もむくみが起こりやすいのが脚です。心臓から遠い位置にあって血液の流れが悪くなりやすいことと、重力の関係で水分が溜まりやすいからです。 脚のむくみは一般に立ち仕事の人に多い症状ですが、実はデスクワークの人にもよくみられます。どちらも同じ姿勢を続けることで、脚の組織液(水分を含む血液、リンパ液など)の循環が悪くなり、細胞のすき間などに水分が停滞するからです。
また疲れが溜まった時や睡眠不足になった時などにも、脚のむくみが起こりやすくなります。これは血液を送り出す心臓の働きが低下するためです。 中高年になって脚の筋力が低下した場合にも、むくみが起こりやすくなります。脚の筋肉(とくにふくらはぎ)は、血液を心臓に戻すポンプの役割をしているため、筋力が低下すると血液がうまく戻らなくなり、血液中の水分が停滞するからです。 こうした脚のむくみの多くは一時的なもので、一晩寝ると治まる程度ならあまり心配はありません。 注意したいのは、病気が原因となる脚のむくみです。原因には、心臓や肝臓、腎臓などさまざまなケースが考えられます。むくみから重大な病気が発見されることもあるので、なかなか治らない場合には受診しましょう。

一晩寝ても治らないむくみには、重大な病気が原因となっているケースもあるなんて…。たかをくくらずに注意する必要がありそうですね。

健康診断で異常がなくても
早めの受診を

私は急に心配になり、精密検査を受けることにしました。でも、毎年の健診では異常もなくむくみも片足に限局していたので、自分自身それほど気にしていなかったのです。

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まずは「全身性」の原因と「局所的」な原因を見極める

脚のむくみの原因としては全身性の原因と局所的な原因に分けられます。まずは全身性の原因についてみていきます。
全身性の浮腫をきたす疾患としては、心不全、腎不全、低栄養、高度貧血などが挙げられますが、これらは一般的な健康診断でも発見できる場合が少なくありません。
この場合、むくみは脚だけでなく、手や背中などもむくむことがあります。脚は身体の最も下にありますので、症状は出やすく、両足のすねや足の甲を押すとへこんで戻らないようなむくみの症状が出ます。また、体重の増加や尿量が減少してくるのも大きな特徴です。原因は血液検査で判る場合が多いので、病状に合わせて投薬治療などが行われます。
脚のむくみから、心不全の原因となる動脈硬化や狭心症、心筋梗塞などの重大な病気が発見されることもありますので、毎年の検診と早めの受診が大切です。

脚以外にもむくみがでているのか、それとも局所的なものなのかも、一つの目安になるということね。

局所的なむくみで
瘤のようなものが気になる場合は?

私の場合は体重の増加もなく、脚のむくみも片足で、全身には及んでいないようでした。しかし、むくみと同時に血管に沿った瘤のようなものが気になっていました。この点について医師に聞いてみました。

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局所的な脚の腫れやむくみで多いのが静脈瘤

脚に腫れる原因がある場合には片側の脚の場合が多いですが、時に両脚が腫れることもあります。また赤く腫れたり、熱を持ったり、痛みを伴うこともあります。
最も多い原因は「静脈瘤」が挙げられます。中高年女性に多く発症します。静脈の弁の働きが壊れて血液が逆流することが原因です。脚がだるいとか、重い、つりやすいなどの症状があり、脚を拳上して休むと改善することが多いですが、悪化すると休んでも改善しなくなります。軽症の場合には弾性ストッキングを用いた自己管理が可能ですが、日常生活に支障をきたすような場合には、手術療法が行われます。最近は術創が小さい血管内手術が行われるようになっています。

中高年女性に多い静脈瘤の話は聞いたことがあります。悪化した場合は手術が適用になることもあるのね。

静脈血栓症やリンパ浮腫などの病気が潜んでいる場合も

私の症状は静脈瘤の可能性が高いように思いましたが、もしほかに注意が必要な病気があるとしたら、どんなものなのか尋ねてみました。

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怖い病気として注意したい「静脈血栓症」や「リンパ浮腫」

他に怖い病気として重要なのは、「静脈血栓症」と「リンパ浮腫」です。
静脈血栓症は、脚の静脈が血栓(血液の塊)でつまってしまう病気です。片方の脚全体が急に赤く腫れます。病気やけがで寝ている時や長時間乗り物に乗っている時などに起きやすいといわれています。血栓が脚の静脈から血流に乗って肺の血管につまる肺塞栓症(一般にはエコノミー症候群とよばれています)の原因となる可能性があり、その場合命にかかわることもあります。治療は血液を固まりにくくする薬を使います。静脈血栓症は女性に多い傾向があり、喫煙者やピル服用者にも多いとされています。
一方、リンパ浮腫はリンパの流れが悪く足が腫れる病気です。生まれつきリンパ管の発達が悪い場合もありますが、悪性腫瘍などでリンパ廓清を伴った手術や放射線治療により発生するリンパ浮腫は、重篤な場合も少なくありません。次第に皮膚が固くなり象皮病といわれる状態になることもあります。手術後早期からの弾性ストッキング着用やマッサージが治療の中心ですが、手術が行われる場合もあります。その他、「蜂窩織炎」では赤く腫れ、熱を持って痛みを伴うのが特徴です。これは脚の感染病巣から細菌が脚に入り炎症を起こした状態です。けがや巻き爪、水虫などから菌が入る場合もあります。治療は抗生物質を使用しますが、切開が必要となる場合もあります。

脚のむくみひとつで、本当にさまざまな病気の可能性が考えられることを改めて思い知ったわ。

静脈瘤の自己管理はどうする?

精密検査の結果と医師の診断の結果、自分の症状が静脈瘤であることが分かり、私は少し安心しましたが、脚のむくみの予防や日常で注意すべきことがあるのかを尋ねてみました。

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脚のむくみを自己管理で予防・改善する方法

脚のむくみを予防するには、日頃からの心がけも大切です。

  1. 適度の運動
    ふくらはぎやももの筋肉が弱ると、血液などの流れが悪くなり、むくみやすくなります。ウオーキングや散歩などでよく歩くことを心がけましょう。
  2. 階段を使う
    階段の上り下りは脚の筋肉をよく使うので、血行などの改善に効果的です。日頃からできるだけ階段を使うようにしましょう(ひざ痛や腰痛がある人は、無理をしないこと)。
  3. 脚の先を動かす
    脚の先を動かすとふくらはぎの筋肉も動き、血液などの流れが良くなります。椅子に腰かけた姿勢でかかとを上げ下げする。また、かかとを床につけて、つま先を上げたり、伸ばしたりする運動をしましょう
  4. 弾性ストッキングを上手に使う
    夜間や休日などには弾性ストッキングを使って、血液、リンパの流れを補助しましょう。
    治療用でない場合には着圧は高い必要はありませんが、部位による着圧を変えるなどの工夫を凝らした商品も開発されているので、商品を十分に吟味した上で使用してください。
脚の筋肉を鍛えるように意識してみることはもちろん、早速、弾性ストッキングの着用を検討してみるわ。

Y江の感想

私は早速インターネットで「弾性ストッキング」を検索し、購入手続きをしました。使用して3か月たった今は、脚の疲れも少なく、静脈に沿った瘤も幾分小さくなったような気がしています。いずれにしても、単なる脚のむくみだと放置せず、早めの受診で症状の改善や自己管理による予防ができて、とても良かったと思っています。

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監修医プロフィール

落合 和彦

生年月日 昭和26年10月10日
現職 東京慈恵会医科大学客員教授
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長
公益社団法人 東京都医師会理事

学歴および職歴
昭和52年東京慈恵会医科大学卒業後、米国UCLA留学を経て東京慈恵会医科大学付属青戸病院院長、産婦人科教授を歴任
平成29年同大学を定年退任 同大学客員教授となる。
公益社団法人・東京都医師会理事、一般社団法人・東京産婦人科医会名誉会長を兼務

所属学会
日本産科婦人科学会(功労会員)、日本産婦人科医会(理事)、日本婦人科腫瘍学会(功労会員)、日本臨床細胞学会(功労会員)、日本産婦人科手術学会(功労会員)日本サイトメトリー学会(名誉会員)など

2019年11月現在

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