第13回
コロナ禍での肌トラブル

監修医 落合和彦
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長

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コロナ禍での肌トラブル

“仕事もプライベートも自分らしく充実させたい”そんなあなたのウェルネスライフを叶えるために、各方面の専門医が、働く女性のヘルスチェックのアドバイスをするこのコーナーでは、女性の身近にリスクがあるトピックスをご紹介します。

CASE.13では、コロナ禍の影響から日常生活でマスクが手放せない状況が当たり前になった今、女性たちが新たに抱える肌トラブルについてです。「マスク皮膚炎」「紫外線対策」の他にも、マスクと距離が近い眼への影響、ニキビを併発するその他の疾病の可能性など、マスク生活で注意すべき健康トラブルについて、同級生の働く30代、T江とY子のケースをご紹介します。

職場でマスク姿が当たり前の今、30代T江とY子の肌悩み

CASE.13 コロナ禍での肌トラブル

T江です。私の職場でもマスク姿が当たり前になってきましたが、仲良し女子のY子と共に夏場の「肌トラブル」に悩んでいました。紫外線対策の化粧品やサンシェードなどは積極的に使っていますが、「5月中には未だ早いのかな」と思っていました。

ドクターズEYE!
気温がそれほど高くない5月でも紫外線対策は必要!

肌の老化は、加齢によるものが2割、紫外線によるダメージが8割とされています。紫外線による肌のトラブルは、5月に入り特に増えています。気温がそれほど上昇していなくても、肌に届く紫外線量はすでに真夏のそれに匹敵しているからです。紫外線にはその波長によって「紫外線A波(UVA)」と「紫外線B波(UVB)」があります。このうち特に肌に悪いのが、UVAより波長の短いUVBとされています。UVBは、長時間の日光浴で肌が真っ赤に焼けたり(サンバーン)、水膨れができるなどの主な原因となっています。UVBはエネルギーが強く、肌表面の細胞を傷つけたり、炎症を起こしやすいので、皮膚ガンやシミの原因になることもあります。波長が短い分、UVAに比べるとオゾン層や上空の雲に阻まれ、地上に到達する量は全紫外線量の約10%とされています。

肌老化の原因の8割が紫外線によるダメージで、5月からすでに対策が必要な紫外線量だとは、初めて知りました。マスクをしていてもしっかり対策をしないとダメですね!

マスク着用していても
紫外線は防げない!?

紫外線対策について、日頃から気になっていたことをこの際、質問してみました。「紫外線対策として、日傘やサングラス、マスクで直射日光を防いでいれば、肌トラブルは防げるのですか?」

ドクターズEYE!
UVAは雲や窓ガラスを通り抜けるため日焼け止めが有効!

たしかに、日常生活の中で、例えば日傘を使うなど、極力直射日光に当たらないように心がけることだけで、ある程度防御することができます。しかし、注意が必要なのはUVAとされています。波長が長い紫外線波A波UVAは、肌の奥深くまで到達し、じわじわと肌に様々な影響を及ぼします。例えば、コラーゲンを変性させ、しわの原因になっていくなど、長い時間をかけ、気付かない間に肌に悪影響を及ぼします。しかも紫外線A波(UVA)は、オゾン層を通り抜けやすく、常時、紫外線B波(UVB)の20倍以上も地上に降り注いでいます。雲や窓ガラスを通り抜けやすいという性質を持っているので、曇りの日も日当たりの良い家の中でも、日焼け止め対策が必要です。

注意が必要なUVAが窓や雲を通り抜けやすい性質があるなんて!マスクをしていても日焼け止めによる対策が必要なのも頷けますね。

マスク生活でニキビができやすいのはどうして?
その原因と対策は?

Y子です。この1、2年は、すでにマスクも顔の一部になっていましたが、マスクの下の気になる「肌トラブル」を経験していました。「マスクの中はこんなに潤っているのに、口の周りに吹き出物ができやすくなってきました。去年は、あまり経験しなかったのですが・・・」。

ドクターズEYE!
マスク皮膚炎は擦れと蒸れが原因。こまめなマスク交換を

この1、2年は、コロナ禍の中でマスクが外せない状況でしたね。マスクの下の「マスク蒸れ」を「肌の潤い」と勘違いしているケースも少なくありません。長時間、マスクを着けていることで、「普段よりニキビができやすい」「湿疹のようなブツブツが口周りに出来ている」など、肌トラブルに悩んでいる方が多くなってきました。これが「マスク皮膚炎」ですが、その原因は、「擦れ」と「蒸れ」です。肌とマスクが擦れると、物理的刺激で角層のバリア機能が悪化し、さらにマスク内の蒸れも刺激のひとつとなり、細菌感染の素地となります。夏場は頻回にマスクを取り換える、などの工夫が必要です。

肌が潤っていれば肌の状態は悪くないと先入観を持っていましたが、これからはこまめにマスク交換をしようと思います。

マスクの着用と日焼け止めの効果の関係

たしかに、昨年に比べてマスクの交換頻度が減っていることには気がついていました。ちょうど最近、密にならない環境や外出時にはマスクを外す機会が増えたとはいえ、まだまだ完全にマスクを手放す状況ではないので、できるだけマスクと上手く付き合っていこうと考えていたところです。
また紫外線とマスクの関係についてさらに続けて尋ねました。「マスクをしていても日焼けするのでしょうか?マスクの下にも紫外線対策は必要なのでしょうか?」

ドクターズEYE!
マスクの紫外線対策で注意!擦れる部分は日焼け止めが取れやすい

ある企業の実験では、マスクを装着した人形を使って紫外線を照射したところ、マスクで覆われた頬や顎部分も紫色に変化し、マスクの下の肌にも紫外線が到達していることを確認したとのことです。このことから、マスクの下であっても十分な紫外線対策が必要です。しかし3時間が経過すると、マスクで擦れやすい部分では、すでに塗布した日焼け止めがほとんどとれていたということです。ですから、数時間ごとにマスクを外し、日焼け止めを塗り直すなどの対策が必要です。

たしかに化粧品もマスクが擦れる部分では落ちてしまいますよね。日焼け止めも塗り直す必要があるのは当然ですね!

紫外線が眼に与える影響についての注意点と対策は?

マスクの下の肌に注意をしようと決意しましたが、同じように太陽にさらされている眼に対しても、もしかして何か影響があるのでしょうか。どのような影響があるのか尋ねました。

ドクターズEYE!
紫外線対策は眼の病気にも有効。色の薄いものを選ぶのがポイント

白内障は、眼球の中の「水晶体」が濁る病気で、進行するにつれて見えにくくなる病気です。水晶体は、カメラのレンズのようなもので、本来透明で光をよく通すのですが、遺伝や加齢など、色々な影響を受けて少しずつ白くにごっていきます。紫外線も水晶体に影響を与える原因の一つです。こういった病気を予防するためには、紫外線が目に入ることを防ぎましょう。それには、サングラスやコンタクトレンズ、帽子等の利用が有効です。
サングラスやコンタクトレンズを選ぶ際に、紫外線をカットできるものを選ぶことは当然ですが、人間の瞳は、色が濃くなると瞳孔が開きます。色が濃いものを使用すると、より多くの紫外線が瞳に侵入することになりますので、色は薄いものを選ぶことが重要とされています。

紫外線カットのアイテムは色の薄いものがベターなのね!これからは帽子やサングラスを選ぶ時の参考にします。

太陽光は危険だけ?

太陽光は人間にとって悪い影響しかないのでしょうか? T江もY子も、小学生の頃(今から20年近く前ですが)みんなで「日光浴」をしたものでしたが、急に心配になってきました。

ドクターズEYE!
太陽光は人の健康にもなれば、ダメージにもなる

太陽光には健康を維持する上で欠かせない多くの作用があります。ビタミンDはカルシウムの吸収・代謝を促進して、丈夫な骨をつくるために大切な栄養素で、その80~90%は日光浴によって体内で生成されます。また生体リズムを調整する作用、殺菌作用などもあります。ですから、太陽光に当たることは人間にとって欠かせないことと考えられます。その一方で、太陽光の紫外線は肌ダメージや皮膚のシワ、シミ、皮膚がん、白内障などの原因となるため、過剰に浴びることは避けるべきです。

太陽光を浴びると気持ちが清々しくなるし、過度に当たればダメージにもなる。それを踏まえて適切な日焼け止め対策が必要なのですね。

マスク生活で最も気になるニキビケア
悪化を防ぐ方法は?

ところで、最近月経の周期に伴って「ニキビ」ができやすいことにも悩んでいます。マスク生活の影響もあるのか、最近悪化してきたような印象があります。

ドクターズEYE!
ニキビの原因はさまざま。まずは洗顔と保湿

ニキビとひとくちに言っても、その原因はさまざまです。日本皮膚科学会のニキビ治療のガイドラインでは、1日に2回までの洗顔を勧めています。そして、大事なのは洗顔後の保湿です。洗顔後は、すぐにしっかり保湿してください。また、ホルモンバランスが崩れることによってできるニキビは、月経周期に関わっています。通常のニキビのようにニキビ治療薬も使用しながら、低用量ピルなどのホルモンバランスを整えるような婦人科系の治療薬を用いられることもあります。いつも同じような周期でニキビができる、という場合にはホルモンが原因であることを疑ってみるのもひとつです。治療でニキビが良くならないような場合には、婦人科医に相談されるのも良いでしょう。

ニキビの原因はひとことでは言えないのですね。まずは肌を清潔に保って保湿、またホルモンバランスを注意してみます。

繰り返されるニキビ
難治性の場合は生活習慣や婦人科系のチェックを

ただどうしても洗顔、保湿を十分にしていても「同じところに繰り返しできるニキビ」に悩んでいました。家系的に糖尿病があることも気になっていたので、そのことについて医師に尋ねてみました。「自分の血液検査では糖尿病の指標は問題ありませんでしたが、若い頃から月経不順で、多嚢胞性卵巣と言われたこともありました。何か関係あるのでしょうか?」

ドクターズEYE!
難治性のニキビは生活習慣の管理や婦人科的な管理も必要

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)では、約70%にニキビを訴えることがあり、血糖値をコントロールするインスリンに対して抵抗性を持つ患者も見られるようです。ですから難治性のニキビの方は、通常のニキビ対策ばかりでなく、糖尿病などの生活習慣病の管理、婦人科的な管理も必要になることがあります。

「たかがニキビ、されどニキビ」ね。早速、生活習慣病のチェック、婦人科的検査も予約を入れてみます。

T江、Y子の感想

マスク生活が長引くにつれて、肌トラブルを中心としたさまざまな体調の変化が感じられるようになりました。コロナウィルスに感染しないこともさることながら、日ごろから体調管理をまめにチェックすることが何よりも大切だと感じる今日この頃です。

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監修医プロフィール

落合 和彦

生年月日 昭和26年10月10日
現職 東京慈恵会医科大学客員教授
一般社団法人 東京産婦人科医会・名誉会長
公益社団法人 東京都医師会理事

学歴および職歴
昭和52年東京慈恵会医科大学卒業後、米国UCLA留学を経て東京慈恵会医科大学付属青戸病院院長、産婦人科教授を歴任
平成29年同大学を定年退任 同大学客員教授となる。
公益社団法人・東京都医師会理事、一般社団法人・東京産婦人科医会名誉会長を兼務

所属学会
日本産科婦人科学会(功労会員)、日本産婦人科医会(理事)、日本婦人科腫瘍学会(功労会員)、日本臨床細胞学会(功労会員)、日本産婦人科手術学会(功労会員)日本サイトメトリー学会(名誉会員)など

2019年11月現在

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